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ガンマナイフセンター

ガンマナイフセンターについて

小牧市民病院ガンマナイフセンターでは、定位的放射線治療装置であるガンマナイフを全国に先駆けて導入し、多数の患者さんを治療しています。ガンマナイフによる治療は放射線手術と呼ばれ、開頭手術を行わず、脳腫瘍、脳血管奇形、三叉神経痛などの病気を治療するものです。現在、ガンマナイフは世界で約280台、日本では約50台が稼働しています。
小牧市民病院ガンマナイフセンターでは1991年5月にガンマナイフ治療を始め、9000人以上の患者さんの約30000ヶ所の病変を治療し、有効な治療成績を得ています。実は全世界でガンマナイフ治療を受けられた患者さんの100人に1人は日本の小牧市民病院で治療を受けています。

ガンマナイフとは

ガンマナイフ治療装置の中には、放射性物質であるコバルト60の線源が半球状に配置されています。頭部に装着されたレクセルフレームをコリメータヘルメットに固定し、ドームにある192個(24個×8セクター)の穴を通じてコバルト60から出るガンマ線がヘルメットの一点で集まるように設計されています。1本1本のガンマ線は線量が非常に低いために照射時に貫通する頭皮、骨、脳、血管、神経などへの影響は極めて少なく、それらが集まる一点を病巣に合わせることによって病巣のみに高い線量のガンマ線が照射できる構造になっています。
治療に際しては、脳内の病変を正確にドームの中心に位置する必要があるために、局所麻酔下に頭部に定位脳手術の頭蓋固定フレームを装着した後、MRI、CT、脳血管撮影などの必要な検査を行い、病変の座標を正確に計測します。治療前日までに撮影した画像検査を用いることもあります。また、病変の状態によっては頭蓋固定フレームではなく専用のマスクで固定を行うこともあります。
照射中は全く痛みを伴いません。病変の数、大きさによって治療時間は異なりますが、概ね30分から120分ほどで治療は終了します。

小牧市民病院のガンマナイフ治療装置

1991年に初代ガンマナイフ治療装置を導入してから現在まで、時代とともに治療装置のバージョンアップを行っています。近年では2012年4月には全コンピュータ制御が可能になったモデルPerfection(パーフェクション)に更新し、2019年5月からは最新モデルIcon(アイコン)を導入しています。Iconの特徴として、
①マスク固定システムの追加
従来のフレームによる頭部固定に加え、マスクによる頭部固定でも治療が可能になりました。これにより今まで治療が難しかった大きな腫瘍や、脳の機能障害をきたしやすい部位の病巣や視神経などリスクの高い部位に、分割照射でより安全に治療ができるようになりました。頭部固定方法については患者さんの病気に応じ、担当医が治療に最適な方法を選択します。
②コーンビームCTを搭載
照射位置を患者さんの位置に合わせ自動補正するシステム(コーンビームCT)を搭載し、実際の治療位置における頭部画像を撮影し、治療前に立てた計画をCT画像に合わせ込む形で自動補正し、より正確な照射を実現します。
③リアルタイムHDモーションマネージメントシステム
フレーム固定時には頭部は全く動きませんので本システムは不要ですが、マスク固定による治療を行っている時に患者さんの頭部位置を赤外線で正確にとらえ、リアルタイムでモニタリングすることにより、患者さんの動きを監視します。設定範囲を超えて動いた場合、照射を停止し、正常組織への照射を防ぎます。

受診方法および治療の説明

ガンマナイフ治療決定までの流れ

ガンマナイフの治療は完全な予約制で行います。まずはガンマナイフ担当医の外来を受診いただき、病気の状態によってガンマナイフ治療が適切であるかどうかを診断します。ガンマナイフ治療の適応であれば治療の時期、フレーム固定またはマスク固定どちらで治療を行うかなど患者さんごとに適切に判断して治療日を決定します。
ガンマナイフ治療は3割負担の場合には、お部屋の種類にもよりますが、窓口でお支払いいただく金額は概ね20万円弱となります。 なお、所得によって、高額療養費の申請が可能な場合があります。高額療養費については各保険者にご確認ください。

患者さんの受診方法

ガンマナイフ治療担当医の外来は、木曜日以外のam8:30からam11:30が受付時間となっています。現在通院している病院で担当の先生より紹介状と画像CD-R(または画像フィルム)を用意して頂き、受診の際にご持参下さい。
病診連携を通じて前もって診察予約をしていただくとスムーズに受診できます。

フレーム固定によるガンマナイフ治療

基本的に2泊3日の入院治療を行います。
①第1日目
午後からの入院となります。必要に応じて画像検査などがございます。
②第2日目
鎮静剤および局所麻酔薬を併用した状態で、頭部固定用のフレームを装着致します。鎮静剤により寝ている間に終わるため、痛みを感じる患者さんはほとんどいません。その後、頭部フレームが付いた状態でCTやMRIなどの画像検査を行います。脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻の患者さんは脳血管撮影もございます。これらの情報をガンマナイフ専用コンピューターに転送し、実際の病変部位に対する治療計画を行います。引き続いて実際のガンマ線照射を行う治療段階に入ります。治療時間は病変の種類・ 大きさ等により異なりますが、おおむね30分から2時間位です。
③第3日目
午前中に退院となります。
治療後は、治療病変の変化を確認するために約3ヶ月から6ヶ月毎に定期的なMRI画像やCT画像検査がございます。紹介元の病院で画像を撮影して頂き、我々もその画像を見させて頂く方針をとっております。

マスク固定によるガンマナイフ治療

病変の状態によって分割回数が異なり、それによって治療期間も異なります。また患者さんの状態や病気の種類によって入院で治療を行うこともあれば外来通院で治療を行うこともあります。
個々の症例によって治療期間は全く異なりますが、代表的な経過を以下に記載します。
①第1日目
治療に用いるためのMRIなどの画像検査を行い、その後に患者さんの頭部固定用のマスクを作成します。入院治療の場合はマスク作成後に引き続き1回目の照射を行うこともありますが、外来通院治療の場合は後日に1回目の照射を行うこともあります。
麻酔や鎮静剤などは使用しません。
マスク作成と照射を一度に行う際には90分から120分くらい要します。
②第2日目から第4日目
初日に作成したマスクを用いて2回目以降の治療を行います。照射のみとなりますので30分から60分程度で終了します。
③第5日目
5分割の治療を行う際には最終日です。照射終了後に治療に使用していたマスクをお渡ししますので、ご自宅で保管してください。

代表的疾患の治療例

血管奇形

脳動静脈奇形

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
約3年後
約3年後

生まれながらの脳血管奇形である脳動静脈奇形は、ガンマナイフの非常に良い適応のひとつです。奇形の大きさにもよりますが、写真に示すように多くの症例でガンマナイフ治療後3年から5年で完全に消失します。完全に消失しない場合でも繰り返しのガンマナイフ治療により、治癒させることが可能です。

海綿状血管奇形

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
90 ヶ月後
90 ヶ月後

海綿状血管奇形はガンマナイフ治療を行うことでその後の出血を予防できる可能性があります。本症例は6回の出血歴がありましたが、治療後は出血が1度もなく約8年が経過しました。

脳硬膜動静脈瘻

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
17 ヶ月後
17 ヶ月後

内頚動脈付近の動静脈瘻に対してはカテーテル治療が行われることが多いですが、ガンマナイフ治療も非常に有効です。本症例はガンマナイフ後17か月で硬膜動静脈瘻が消失し、神経症状も消失しています。

脳腫瘍

聴神経腫瘍

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
108 ヶ月後
108 ヶ月後

聴神経腫瘍は本例のようにガンマナイフ治療後徐々に縮小し、その後に増大することは極めてまれです。治療前の聴力が問題なければ、治療後も聴力が長期にわたって保たれる可能性もあります。外科手術と違い、顔面神経の麻痺が生じることはほとんど無いのがガンマナイフ治療の大きなメリットです。

髄膜腫

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
37ヶ月後
37ヶ月後

開頭手術による摘出が困難な脳深部にある髄膜腫や手術後の残存腫瘍または再発腫瘍などにガンマナイフ治療が行われます。ガンマナイフ治療後に腫瘍が縮小するには非常に長い年月を必要としますが、腫瘍の増大を抑え、安定させる効果があります。
本症例はガンマナイフ治療を行ってから約3年後のMRI写真ですが、この状態で10年以上無症状で過ごしています。

下垂体腫瘍

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
30ヶ月後
30ヶ月後

写真はホルモン非産生下垂体腺腫でガンマナイフ治療約30ヶ月後、腫瘍は見えないほどになっています。外科的手術後の残存や再発に対して行われることが多いです。ホルモン産生腫瘍に対してはホルモン異常を正常化させることもできます。

頭蓋咽頭腫

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
87ヶ月
87ヶ月

視交叉付近に発生した頭蓋咽頭腫。治療後87ヶ月で著明な縮小を示します。

転移性脳腫瘍(単発)

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
12ヶ月後
12ヶ月後

転移性脳腫瘍は放射線治療が極めて有効です。症例は術後の再発例で、ガンマナイフ治療後3ヶ月ほどで腫瘍は徐々に縮小し、12ヶ月後には分かりにくい程になっています。基本は1回照射による治療ですが、以前は摘出術を行う必要のあった大きな病変でもIconの導入によりガンマナイフ照射を2~5回程度に分けて安全に治療を行うことが可能になりました。

転移性脳腫瘍(多発)

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
7ヶ月後
7ヶ月後

乳癌の多発脳転移。ガンマナイフ7ヶ月の時点で、3個の転移性腫瘍は見えにくくなっています。10個以上の転移性脳腫瘍があっても、一度に治療が行えます。

グリオーマ(神経膠腫)

神経膠腫に対するガンマナイフの効果は不確かです。しかし、例示しました症例の様に治療後20ヶ月ほどでほぼ消失する例もございます。悪性度が低いものほどガンマナイフ治療後の経過は良好ですが、悪性度の高い神経膠腫(神経膠芽腫)に対しては再発時に腫瘍の成長スピードを遅くすることを目的として照射を行うことがあります。

脊索腫

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
40ヶ月後
40ヶ月後

ガンマナイフ後40ヶ月で、腫瘍の著明な縮小を認めます。再発時にも繰り返しの照射が可能です。

脈絡膜悪性黒色腫

ガンマナイフ時
ガンマナイフ時
18ヶ月後
18ヶ月後

以前は眼球摘出しか手がなかった脈絡膜悪性黒色腫も、本症例ではガンマナイフ後18ヶ月でかなり縮小し、眼球を温存できています。目は動いてしまうために、治療時には眼科と協力して眼球を固定する処置を行ってから照射を行う必要があります。

機能的疾患

三叉神経痛

開頭手術による治療ができない場合や、開頭手術後も神経痛の改善に乏しい場合などに適応となります。手術と比較して神経痛の改善率は劣るものの、低侵襲に治療が行えることが魅力です。

舌咽神経痛

舌と咽頭の激しい神経痛を伴うこの症例では、右舌咽神経を狙って(印)治療し、症状は軽快しました。

現在までの症例数

総症例数 : 9,077人 (総病巣数 : 27,075個) (1991年5月から2020年3月31日まで)

1.悪性脳腫瘍 4,033人(44.4%)

  • 転移性脳腫瘍 3318
  • 悪性神経膠腫 249
  • 悪性髄膜腫 90
  • 悪性リンパ腫 64
  • 悪性脳腫瘍その他 312

2.良性脳腫瘍 2,967人 (32.7%)

  • 神経鞘腫 1335
  • 髄膜腫 738
  • 下垂体腺腫 406
  • 神経膠腫 158
  • 頭蓋咽頭腫 143
  • 良性脳腫瘍その他 187

3. 血管奇形 1,783人 (19.6%)

  • AVM 1486
  • 海綿状血管奇形 228
  • 硬膜動静脈瘻 57
  • 血管奇形その他 12

4.機能的疾患 294人(3.2%)

  • 三叉神経痛 274
  • 機能その他 20